長崎市と福井県立恐竜博物館は、長崎半島西海岸の三ツ瀬層(後期白亜紀:約8,000万年前)から、新たにティラノサウルス科の歯の化石を発見しました。
平成27年に公表された2点の歯の化石に続く新たな化石で、長崎に大型のティラノサウルス科の肉食恐竜がいたことを示す追加資料となります。
長崎市と福井県立恐竜博物館の共同調査において、長崎半島西海岸の三ツ瀬層から複数の脊椎動物化石を収集し、前年度まで福井県立恐竜博物館で化石クリーニングと修復作業が行われていました。今回公開の新たな歯の化石は平成31年4月に発掘されたもので、化石のクリーニングと鑑定が最近完了しました。三ツ瀬層からは複数の獣脚類恐竜の歯が発見されており、過去の化石と比較して、ティラノサウルス科の大型種の追加標本であると判明しました。
<化石の特徴と学術的意義>
今回公開の化石は脱落した歯の化石で、その中央部に圧密による変形(ズレ)があります。歯冠の全てと歯根が一部保存されているなど、全体的に保存は良好です。先端から歯根までの高さ(長さ)は85 ㎜、歯の基部(根元のこと)の幅は33 mm、厚さ18 mmです。平成27年7月に、三ツ瀬層から発見されたティラノサウルス科の大型種の歯の化石2点が公表されていますが、それら先行の歯の化石と同じ産地から今回の化石も発見されました。先行の化石よりやや薄く、小さいのですが、横断面は同様なふくらみのある楕円形で、その大きさと産出時代から同科の大型種のものと思われます。また先端部から基部へと向かう鋸歯列の方向や、歯の先端付近の摩耗の方向などから、右下顎の歯と推定されます。
ティラノサウルス科は、後期白亜紀の後半(約8300万年前~約6600万年前)に現れた獣脚類(肉食恐竜)の進歩的なグループで、北米とアジア(主にモンゴル、中国)に化石記録があります。同科の大型種としては、北米のティラノサウルスやダスプレトサウルス、アジアではタルボサウルス、ズケンティラヌスなどが知られます。今回の化石はそのような大型種が長崎市にいたことを示す追加資料となります。
国内には、ティラノサウルス科よりも原始的で、比較的小さなティラノサウルス上科のより古い化石(前期白亜紀)が知られています。しかし、後期白亜紀の後半に大型化し、その時代に限られる同科の化石は、国内では長崎市以外に産出例がほぼありません。近隣の熊本県天草市からほぼ同じ時期の同科と見られる歯の化石が見つかっています。さらに産出の年代の分かる同科の化石は、アジアのなかで稀なものとなります。なお、化石を産した三ツ瀬層の年代は最近の研究で約8000万年前と分かりました。三ツ瀬層の年代幅についてはさらに詳しい調査も進められています。
<展示公開予定>
下記の予定で長崎市恐竜博物館と福井県立恐竜博物館で化石の実物と複製が展示されます。
・福井県立恐竜博物館常設展示(複製):令和4年10月29日(土)より
・長崎市恐竜博物館常設展示(実物):令和4年10月29日(土)より
長崎市恐竜博物館は令和4年10月29日で開館1周年を迎えます。ぜひ長崎の新たな仲間に会いに来てくださいね。
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